東京新聞は8月3日付朝刊で、テレビ番組に関する読者投稿に「A級戦犯となるも処刑を免れた人物を首相にまでした」との記載について、A級戦犯で戦後首相となった人はいなかったとする訂正記事を掲載した。
訂正があったのは、文化娯楽面に設けられたテレビ番組についての読者投稿欄「反響」。テレビ朝日が7月26日放送した「池上彰のニュースそうだったのか!! 戦争とは何なのかスペシャル」について、74歳の女性が感想を寄せた文章の中に「先の戦争でA級戦犯となるも処刑を免れた人物を首相にまでした日本は、今なおナチスを許さないドイツと比べてあまりにも滑稽だ」という記述があった。
いわゆる「A級戦犯」(A級戦争犯罪人)とは、一般に、連合国が開いた極東国際軍事裁判(いわゆる東京裁判、1946~1948年)で、戦争を計画したり実行したりした「平和に対する罪」で起訴され、有罪判決を下された日本の指導者25人を指す。日本政府は「極東国際軍事裁判所において審理された戦争犯罪人」と定義しており(平成3年10月29日政府答弁書)、起訴後病死、免訴された者を含めると28人。この中に、戦後首相になった者はいない。戦後首相になった岸信介元商工相(東条内閣)はA級戦犯として逮捕されたものの、不起訴になっており、A級戦犯には当てはまらないとされる。
他方、東京裁判で禁固7年の有罪判決を受けた重光葵元外相(東条・小磯内閣)は戦後の鳩山内閣で副総理・外相に、終身刑の有罪判決(後に減刑)を受けた賀屋興宣元蔵相(東条内閣)は戦後の池田内閣で法相になった。
東京新聞2015年8月3日付朝刊14面
東京新聞2015年8月4日付朝刊16面
- 池上彰のニュースそうだったのか!!「戦争とは何なのか」2時間SP(2015年7月25日放送) (テレビ朝日)
- 「戦犯」に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問主意書(野田佳彦) (衆議院 2005/10/17)
- 衆議院議員野田佳彦君提出「戦犯」に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書(内閣総理大臣小泉純一郎) (衆議院 2005/10/25)
- (初稿:2015年8月5日 11:00)