産経新聞は3月20日付大阪本社版朝刊で、「シャープ液晶分社化検討」と見出しをつけ、経営再建中のシャープが主力の液晶事業の分社化の検討に入ったと報じた。しかし、シャープは同日、産経の報道を名指しで検討している事実はないとのコメントを発表し、東証に適時開示を行った。
シャープは、3月10日、「液晶タッチパネル新技術説明会」を開催し、方志教和・代表取締役専務執行役員が液晶事業のポートフォリオ変革として、業務用ディスプレイを中心としたBtoBtoB事業を重視する方針を表明。広報担当者によると、その説明会で、方志執行役員は、他社との統合といった噂を否定する形で、今後も単独で液晶事業を続ける考えを強調したという。
一方、産経の記事には、情報源が全く書かれていなかった。産経のニュースサイト「産経WEST」には、20日付大阪版記事とほぼ同じ記事が19日夜に配信されていた(→「産経WEST」3月19日付記事)。だが、この記事には「液晶分社化検討」の記述だけが盛り込まれていなかった。このニュースサイト記事の原稿に「液晶分社化検討」だけ書き加えて翌日紙面化されたのか、「液晶分社化検討」の部分だけが事後的に削除されたのかは判別がつかず、確認できなかった。産経の広報部は、日本報道検証機構の問い合わせに対して、「個別の記事に関することはお答えできません」と事実上ノーコメントだった。
かつて2012年10月に、台湾の鴻海精密工業が経営再建中のシャープに対して液晶事業の分社化を求めたとの報道があった。今回も、鴻海精密工業が支援に乗り出すとの情報がある。ただ、現時点でシャープが液晶分社化を社内で検討しているとの報道や情報は他にみられず、シャープ自身が明確に否定していることから、産経の報道は事実と異なる可能性が高い。
産経新聞2015年3月20日付朝刊(大阪本社版)10面
- (初稿:2015年3月25日 11:57)